― たとえ話で読む「色・固定・遺伝」 ―
このブログでは、「固定」「遺伝」「構造色」「累代」など、少し癖のある言葉を使っています。
どれも専門用語としての正しさを示すためというより、観察を整理し、考えを共有するために選んでいる言葉です。
ただ、記事が増えるにつれて、前提が分かりにくくなったり、言葉の意味が記事ごとに違って見えたり、途中から読むと置いていかれるように感じたりすることもあるかもしれません。
そこでこのページでは、ブログ内でよく使っている用語をいくつか取り上げ、たとえ話を交えながら整理してみます。
ここでの説明は唯一の定義でも、正解の押し付けでもありません。
「このブログでは、こういう感覚で言葉を使っています」という共有のためのページです。
読み進める中で「この言葉、どういう意味だろう?」と感じたときの、立ち戻る場所になれば嬉しいです。
メンデルの法則
形質が、ある一定のルールに従って分かれて伝わる、という考え方です。
19世紀にグレゴール・メンデルがエンドウ豆の実験から整理しました。
たとえば、赤と白のビー玉がいくつか入った袋を親がそれぞれ持っていて、そこから1つずつランダムに取り出して子に渡すゲームを想像してみます。
ここでは「親が複数の選択肢を持っている」ことをイメージしやすくするための例えです。
赤が強く、白が弱いルールなら、赤+白でも赤に見える。
いわゆる優性・劣性の関係です。
このブログでは、きれいに二択に分かれる形質についてはメンデルの法則がとても有効だと考えています。
一方で、色の濃淡や光沢の強弱、角度で変わる見え方のような連続的な現象は、それだけでは説明しきれないことが多い、という前提で扱っています。
カラーアイ(レッドアイ/ホワイトアイ)の例
カブクワ界隈でよく知られているレッドアイやホワイトアイは、メンデル的な整理が比較的当てはまりやすい形質です。
部屋の照明のスイッチを思い浮かべてみてください。
スイッチがONならホワイトアイが出る、OFFなら通常眼になる。
切り替えのイメージです。
途中で「片方の目だけ白い」「角度によって白く見える」といった状態は、基本的には起きません。
そのため、このブログではカラーアイと体色・光沢は別の話として扱っています。
固定(固定形質・固定できる)
一般には「もうブレない」「毎回同じものが出る」というイメージで使われる言葉です。
同じ場所・同じ時間帯に撮った夕焼けの写真を想像してみます。
毎日だいたい似た色になりますが、雲や湿度、光の具合で必ず微妙に違います。
このブログでは、「固定している/していない」という二択よりも、「どこまで安定して見えているか」という視点を大切にしています。
固定という言葉は、不安を減らしたいときや観察を揃えたくなったときに、強く使われやすい言葉でもあると感じています。
安定した起点
完全に同じではないけれど、毎回この辺から始まる、という感覚です。
コップの水に同じ量の絵の具を落とす場面を考えてみます。
広がり方や模様は毎回違います。水温や流れでも変わります。
それでも、最初に落とした量と位置は同じです。
その「最初の条件」にあたる部分を、安定した起点と呼んでいます。
青紋や光沢についても、毎回まったく同じにはならないけれど、大きく外れない傾向がある。その状態を表すための言葉です。
構造色
色素ではなく、微細構造による光の反射や干渉で見える色のことです。
CDの裏面を思い出してみてください。角度を変えると色が変わりますが、インクで塗っているわけではありません。
ニジイロクワガタも、見る角度や光源、表面状態によって同じ個体でも色が変わって見えます。
そのため、「青か紫か」という二択に収まりにくい現象になります。
発色
「色が遺伝子から直接出てくる」と捉えられがちですが、そう単純ではありません。
同じレシピの料理でも、火加減や水分、調理時間で仕上がりは変わります。
このブログでは、発色を遺伝的な要素、飼育環境、成長過程、観察条件が重なった結果として見えている現象と考えています。
累代(るいだい)
同じ系統を世代を重ねていくことです。
同じテーマで何度もスケッチを描くことに少し似ています。
モチーフは同じでも、線の出方や強調される部分は毎回少しずつ違います。
このブログでは、累代=固定とは考えていません。
世代を重ねる中で、どの特徴が繰り返し現れるのか、どこが毎回揺れるのかを見分けていく過程として捉えています。
「◯◯の血が出た」という表現
透明な水にいくつかの色の絵の具が混ざってできた色を見て、「これは青の水だね」と言う感覚に近いかもしれません。
印象は伝わりますが、水の中に青だけが分かれて存在しているわけではありません。他の色が消えたわけでもありません。
このブログでは、「赤の血」「青の血」といったものが実体として分かれて存在しているとは考えていません。
会話の中では便利な表現ですが、仕組みまで説明しているわけではない、原因が分かったという意味でもない、という前提で使っています。
エラー(青はエラー?)
レシピどおりに料理をしたのに、仕上がりが思い描いていたものと少し違った。
予定していた味とも違う。
けれど、それは必ずしも失敗とは言えません。
「間違えた」というより、想定していた完成像と結果が少しズレただけ、という状態です。
このブログでは、「想定から外れた」ことをすぐに「間違い」とは決めません。
青が出た、思っていた色と違って見えた。
それは観察の前提や比較の基準が、現象と合っていなかった可能性もあります。
「エラー」と感じた場面は、見方を見直すきっかけとして大切にしています。
観察
いちばん大事にしている言葉です。
散歩をしながら、気になった景色をメモしていくようなもの。
行き先を決めすぎず、先に結論を用意しない。
目に入ったものを、そのまま書き留める。
証明することよりも、断定することよりも、まず見えたものを残すことを大切にしています。
あとから解釈が変わってもかまわない。
変わる余地を残すために、観察を積み重ねています。
定義・呼び名
箱にラベルを貼るようなものです。
整理しやすくなり、人に説明しやすくなります。
けれど、中身そのものが変わるわけではありません。
このブログでは、名前をつけることを管理や共有のための便宜的な行為として扱っています。
名前がついた瞬間に固定された性質になるわけではありません。
見方や呼び方が変わる余地を残したまま、言葉を使っています。
最後に
ここに並べた用語は、正解を押しつけるためのものではありません。
むしろ、考えすぎないため、断定しすぎないため、観察に戻るための足場です。
記事を読んでいて「この言葉、どういう意味だろう?」と感じたときは、このページに戻ってきてもらえたら嬉しいです。
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