― なぜ毎回“似た場所”に青が現れるのか ―
これまでの記事で、
- 青紋を「固定形質」として説明することへの違和感
- ニジイロクワガタの色が構造色であること
- 色が連続的に変化する現象であること
を整理してきました。
それでも、
多くの人がこう感じているはずです。
それならなぜ、
青紋は毎回“似た場所”に、
似た形で現れるのだろうか?
この疑問は、
「固定かどうか」という議論とは、
少し違うところに答えがあります。
今回は、この点を
「安定した起点」
という考え方で整理してみます。
青紋は「再現性が高く見える」
青紋の特徴として、よく挙げられるのは、
- 出る位置がだいたい決まっている
- 紋の形が大きく崩れにくい
- 累代しても似た傾向が続く
といった点です。
これらを見ると、
青紋はやはり固定されているのではないか
と感じるのも、
とても自然なことだと思います。
位置が安定していることと、固定は別
ここで、一度切り分けて考えてみます。
位置が安定していること と
形質が固定されていること は、
必ずしも同じではありません。
青紋の場合、
上翅の中でも特定の部位に、
青方向に反射しやすい構造が
形成されやすい条件が、
もともと存在している可能性があります。
つまり、
「どこから青が始まりやすいか」
が、比較的ブレにくい。
これが、
青紋が安定して見える理由のひとつです。
青は「そこから始まる」
構造色として考えると、
青紋は、
青という色が突然出現する
のではなく、
青方向に見える構造が立ち上がる地点
と捉えることができます。
この地点が
毎回ほぼ同じ場所に現れるため、
結果として
「再現性が高い」
ように見える、というわけです。
ただし、その先は、
- 構造の揃い方
- 層の厚み
- 周囲への広がり
- 硬化過程の影響
によって、
少しずつ変わっていきます。
なぜ青紋は「広がる」ことがあるのか
近年では、
- 青紋を起点に、青の面積が広がったように見える個体
- 青ではなく、紫紺寄りに深まった印象を持つ個体
も見られるようになっています。
もし青紋が、
完全に固定された
ON / OFF 型の形質
であれば、
こうした変化は起こりにくいはずです。
一方で、
- 起点は安定している
- その周辺は連続的に変化する
と考えれば、
青紋 → 強化 → 拡張 → 印象の変化
という流れも、
無理なく説明できます。
青紋は「固定されているもの」と思われてきた
ここで、少し視点を整理しておきます。
青紋については、
これまで
「固定されているかどうか」を
一から問い直す対象というよりも、
そもそも固定されているものだと
受け取られてきた側面が強い
ように感じています。
そのため、
固定できているのか
できていないのか
という問い自体が、
あまり意識的に立てられてこなかったのかもしれません。
実際の飼育や選別の場面でも、
青紋が出ているか、いないか
固定できているか、いないか
といった二分法より、
青紋を起点として、
その後どのような変化が現れたか
に目が向けられることが多いように思います。
青紋は、
それ自体が完成形として扱われるというよりも、
そこから構造がどの方向に揃い、
どのような印象へと移っていったのかを
読み取るための「目印」
として、
自然に受け取られてきた存在なのかもしれません。
固定という言葉を使わなくても、整理はできる
青紋は、
固定されているかどうか
を決め切るための対象というより、
変化の流れを整理し、
観察を積み重ねていくための
ひとつの起点
として捉える方が、
無理がないように感じます。
「安定した起点」
という整理は、
- なぜ似た場所に現れるのか
- なぜ毎回少しずつ違って見えるのか
- なぜ時間とともに印象が変わるのか
といった疑問を、
余計な対立軸を持ち込まずに
説明できる考え方でもあります。
フェーズ1のまとめ(青紋シリーズ)
フェーズ1では、
- 青紋は固定形質なのか
- 構造色という視点
- 「安定した起点」という考え方
を通して、
青紋を別の角度から見直してきました。
結論を一言で言うなら、
青紋は、
固定かどうかを決め切る対象ではなく、
観察し続ける対象
だと思っています。
次のフェーズへ
次は、
この「固定/非固定」という言葉そのものを、
別の題材で考えてみます。
前胸の強い光沢を持つ個体、
いわゆる ピカール(フルメタル)。
色ではなく、
光沢という連続量 をどう捉えると、
何が見えてくるのか。
フェーズ2では、
その話題に移っていきます。
フェーズ1|青紋シリーズ(完)
ここまで、青紋について
3つの視点から整理してきました。
- 第1話:青紋は「固定形質」なのか?
- 第2話:なぜ青は出たり出なかったりするのか?
- 第3話:青紋は「固定」ではなく「安定した起点」(本記事)
