― 前胸光沢という「連続量」をどう捉えるか ―

ニジイロクワガタの前胸が、鏡のように強く光沢を放つ個体。

日本では長年、本家由来の名称として知られる「ピカール」という呼び名が、前胸の強い光沢を示す個体に使われてきました。

近年では、海外で一般的に用いられている “Full Metal” という表現も目にするようになっています。

呼び名の話はいったん置いておくとして、ここではもう少し素朴な疑問に立ち返ってみます。

前胸の強い光沢は、固定形質なのでしょうか。

光沢は「出る/出ない」で語れるものか

固定形質という言葉から、多くの人は「出るか出ないか」「あるかないか」といった性質を思い浮かべるかもしれません。

実際、前胸の光沢については、私は★0〜3で目安をつけてヤフオクに出品しています。
★3はいわゆる“強光沢”と呼びたくなるレベルですが、★2との境界では毎回少し迷います。同じラインでも幅があります。

けれど、個体を並べて見ていると、そう単純ではありません。

ほんのり光る個体もいれば、はっきりと強く光る個体もいる。
中には、本当に鏡面のように反射する個体もいます。

そのあいだには、はっきりとした境界線はありません。

観察していると、「ある・ない」というよりも、「どのくらい光るか」という幅の中で揺れているように感じます。

光沢は色と同じく「構造の結果」

前胸の光沢も、基本的には色と同じく構造の影響を受けているはずです。

表皮のつくり、表面のなめらかさ、微細な凹凸の程度。
そうした条件が重なった結果として、あの光沢が生まれているように見えます。

「光る遺伝子がある」と考えるよりも、光りやすい構造がどの程度そろったか、その違いが表に出ているのではないか。私は今のところ、そう捉えています。

この感覚は、青紋を構造色として見てきたときの印象とも重なります。

なぜ「ピカールは固定」と感じられるのか

それでも「ピカールは固定されているのでは」と思いたくなる気持ちも理解できます。

強光沢個体はとにかく印象が強い。写真でも差がはっきり出ますし、並べれば一目で分かります。

そうなると、ある程度の光沢を超えた個体だけに名前が与えられ、それ以下は「ノーマル」と整理されやすくなります。

連続しているはずの現象が、いつのまにかON/OFFのように語られていく。
そこに違和感を覚えたのが、今回の出発点でした。

固定と呼ぶ前に、何を見ているのか

大事なのは、「固定かどうか」を先に決めることではないのかもしれません。

どんな構造が、どの程度そろったときに、あの光沢になるのか。
そこを丁寧に見ていくほうが、現象そのものに近い気がします。

前胸光沢もまた、固定されたスイッチというよりは、連続的に変化しうる表現のどこか一地点。
いまはそんなふうに考えています。

青紋と光沢は、同じ地平にある

青紋と前胸光沢は、別の話題のように見えて、どちらも連続的な変化の中にあります。

ある程度を超えたところで名前が与えられ、「固定」という言葉が当てはめられる。
その構図はよく似ています。

だからこそフェーズ2では、「固定」という言葉そのものを、光沢を題材にもう一度考えてみたいと思います。

次回予告(フェーズ2・第3話)

人はなぜ、連続しているものを「固定」と呼びたくなるのでしょうか。

前胸の光沢を「ある/ない」「名乗れる/名乗れない」と区切ろうとすると、どこかで無理が出てきます。

次回は、光沢を連続量として見たときに何が見えてくるのか。
ピカールでもフルメタルでも言いきれない、「光り方の幅」について整理してみます。

※本記事で使っている用語については、
こちらのページで整理しています。
用語整理ページ