― 「ピカール」と「フルメタル」のあいだで考えたこと ―
ニジイロクワガタの前胸が、
鏡のように強く光沢を放つ個体。
これまで日本では、
そのような個体を指して
「ピカール」と呼ぶことが一般的でした。
私自身も、
前胸に強い光沢を持つ個体
= ピカールと認識されている表現型
という理解のもと、
この言葉を使ってきました。
しかし最近、
ブリード仲間とのやり取りの中で、
ひとつの価値観に触れる機会がありました。
「ピカールは本家の言葉」という考え方
その価値観とは、
ピカールという呼び名は、
本家が作り出した言葉であり、
本家が販売している個体にのみ使うべきもの
というものです。
つまり、
- 前胸がどれだけ強く光沢を持っていても
- 見た目が条件を満たしていても
出自が異なれば「ピカールとは呼ばない」
という考え方です。
これは、
- 正しい/間違っている
という話ではなく、 - 言葉の使い方に対する価値観の違い
だと受け止めています。
私が感じた違和感と、理解できた点
正直に言うと、
最初は少し戸惑いました。
なぜなら、
- 形や構造が同じであれば
- 表現型として同じ呼び名を使う
という考え方に、
私自身は慣れていたからです。
ただ一方で、
- 長い時間をかけて築かれてきた呼称
- 信頼や歴史が重なった名前
として「ピカール」を大切にしている方がいる、
という点も理解できます。
呼び名がずれると、何が起きるか
このような価値観の違いがある状態で、
- 前胸が強光沢だからピカール
- いや、それはピカールではない
というやり取りが起きると、
議論は見た目や構造の話から離れ、
「誰が名付ける資格を持つのか」
「どこまでが正当なのか」
という、
立場や歴史の話に移ってしまいます。
これは、
観察や記録を楽しみたい人にとって、
少しもったいない状況だと感じました。
海外で使われている “Full Metal” という表現
前胸強光沢の個体は、
海外でも普通に見られ、
販売や紹介の場面では、
- Full Metal
- Full Metallic
といった表現が使われています。
ここでの “Full Metal” は、
- 血統名というより
- 見た目の状態を表す言葉
として使われることがほとんどです。
「この個体は前胸の金属的光沢が非常に強い」
という意味合いで、
比較的フラットな表現だと感じています。
なぜ今後は「フルメタル」と表現しようと思ったか
こうした背景を踏まえ、
私は今後、
前胸に非常に強い光沢を持つ個体
= フルメタル(表現型)
という表現を使っていこうと考えています。
その理由は、
- 特定の出自や歴史を主張しない
- 見た目・状態の説明に徹することができる
- 無用な前提の衝突を避けられる
からです。
これは、
- ピカールという言葉を否定する
という意味ではありません。 - むしろ、
その言葉が大切にされてきた背景を
尊重した上での選択です。
表現を変えても、見ているものは同じ
呼び名を「ピカール」から
「フルメタル」に変えたとしても、
- 前胸の構造
- 光沢の強さ
- 見え方の連続性
といった、
観察している対象そのものは変わりません。
名前をどうするかは、
本質ではなく、
どう伝えるかの問題だと考えています。
おわりに
ニジイロクワガタの世界では、
- 同じものを見ていても
- 立場や背景によって
- 言葉の受け取り方が変わる
ということが、
少なからず起こります。
だからこそ私は、
誰かの積み上げてきたものを否定せず、
それでいて誤解を生みにくい言葉を選ぶ
という立ち位置で、
「フルメタル」という表現を使っていこうと思います。
それは妥協ではなく、
この表現型を長く、穏やかに楽しむための、
ひとつの選択です。
補足
- ピカールという呼称を否定する記事ではありません
- 歴史や本家の価値を評価・批判するものでもありません
- 表現型の呼び方についての整理と選択の話です
次回予告|フェーズ2・第2話
前胸の強い光沢を持つ個体は、
「ピカール」「フルメタル」など、さまざまな呼び方で語られてきました。
では、その光沢は
固定された形質なのでしょうか。
それとも、連続的に変化する“量”なのでしょうか。
次回は、
前胸光沢という連続量をどう捉えると見えてくるのか、
青紋と同じ視点から整理してみます。
